Deep Space Rhymin' | スタートレック映画史上最高傑作発売開始

2009.11.08 Sunday

スタートレック映画史上最高傑作発売開始

劇場公開時にも足を運びました。　外国の方に取って1.800円という料金は大変割高に感じられたと思いますが、見たところ約三割が白人の観客でした。　私は飲食店を営んでいますが、エプロンに連邦の小さなピンバッジを貼付けています。　お客様には時折白人の旅行客の方が居られるのですが、やはり目ざとく私のバッジを見つけて、そこからお話が弾む事があります。　日本では圧倒的にスターウォーズの方に人気が集中しているようですが、米国ではスタートレックの人気も負けず劣らずというところらしいです。

私は「ダースシディアスなどという生まれもっての悪。説明のつけようのない悪が存在しているスターウォーズより、私たちが過ごしている現代社会が持つ問題点を合わせ鏡のように投影して、それをお話に昇華しているスタートレックの方が好きです。」

しかし、それは一時間番組を年に数十本、異なったエピソードとして放送しなくてはならないTVシリーズの持つ宿命と言えます。　故に、TVシリーズから派生して生まれる映画板スタートレックは、その特殊効果、スケール感等がどうしても小さくなってしまいます。　フェーザーガンも映画の時だけ迫力のある物を使用する訳には行かないのです。　エンタープライズの船体こそ映画版では豪華ですが、TV用の俳優（Wシャトナー等）の演技はスクリーンには向かなかったりしました。その悪しき伝統は、シェークスピア俳優のPスチュワート達を持ってしても大きく改善される事は無く、スタトレ映画はマニアだけの物。　公開期間はせいぜい二週間という物になっていました。忸怩たる思いを持ち続けていました。

しか～し、今度のスタートレックは違います。　

DVD発売前夜にWOWWOWやスターチャンネルで完全放送を行ってしまうほどの自信です。　BSデジタルでの放送クオリティは、ブルーレイはともかくDVDのそれを上回ってしまうのに！　それでも、数多くの方に、まずは見てもらわなければならないのがスタートレックの現状なのかもしれません。　そして、それを知ってもらえれば、きっと楽しんでもらえる、買ってもらえるという自信があっての事でしょう。

実際のところ、それは成功しそうです。　大変良く出来た素晴らしい映画です。　スタトレファンならずとも、多くのSF映画ファンに広くお薦めします。　私が大好きな映画監督JJエイブラムスが辣腕を振るっています。　彼自身はまったくスタートレックのファンではなかったようです。　しかし、それが功を奏したとも言えます。　何故なら。

スタートレックオリジナルストーリーで、艦隊の規則を無視して、先遣隊と共に未知の惑星に降りるカーク船長の人となりが語られます。　彼の正義感。　異星人と平気でメイクラブを行うのは学生時代から。ブリッジで林檎を丸かじりするのも昔から。　クリスパインはアメリカ人が好むサル顔（マックイーン／ブラピ／Cスレーター／Mデイモン等）ですが、ヤングカークに適任でした。　きっと続編が生まれるでしょう。

聡明で知的なバルカン人の教育現場の様子が描かれる反面、先祖は野蛮なロミュランと同じであることを伺わせる場面もあります。　レナードニモイがオリジナル版放送当時に「セクシー」さに絶大な女性人気があったとのことですが、今回スポック役に抜擢されたザッカリークイントを見て、それを実感しました。

Drマッコイが何故ボーンズと呼ばれていたのか？　判ります。

ヒカルスールーが、「昔から」フェンシングの達人であった事が判ります。

スコッティが「昔から」掛け値をする人だった事が判ります。

チェコフの英語は最初は酷い物だった事が判ります。

ウフーラとスポックの仲は意外にも、、。

それらは昔からのスタトレファンであれば、思わず膝を叩きたくなる様なエピソード。　それらが熱心なファンでなかったエイブラムズ監督のプランである訳がありません。　世界中のトレッキーから広く意見を取り入れて注意深く綴られた脚本があっての事です。　　それらを骨太な物語に混ぜ込み、素晴らしく配置してくれました。

また、エリッックバナ演じる敵役キャプテンネロが。決して「生まれながらの悪人」でなかった事が素晴らしい。　彼は市井の人でした。　彼は自分の星と家族を救うべくバルカン人のスポックに助けを求めたのですが、不慮の事故により、全てを失う事となります。　その悲劇の責任を、行為の当事者であったスポックに負わせて、彼に復讐する機会を待ち続けます。　そのうちにスポックに対する怒りや悲しみの構造すら忘れてしまうのですが、もやはそのような事はどうでも良くなってしまっています。

十字軍以来、宗教のため、信じる場所の為、または油のために中東で流され続けている血の構造の投影なのかと感じました。　このあたりはスタトレの真骨頂でしょう。

氷の惑星での下りは、スポックとの出会い、怪物との戦い共にご都合主義が過ぎましたが、お話の骨格を成すタイムトラベル映画としてみた時、従来禁忌とされた同一時間同一空間での同一人物の共存があっさりと行われたのが新鮮でした。　物語に深みや次回作への弾みを付ける為に必要なシーンだと思いましたが、なかなか良いシーンでありました。

そして、エンディングロールが始まります。　ここで初めておなじみのテーマ曲が流れます。　オープニング以来、劇中にあの曲が流れないのを不思議に思っていましたが、ここで流れるとは。流石、音楽に頼らないJJエイブラムズの面目躍如。　感服しました。

この映画を語ると筆が尽きません。　本当に素晴らしい作品となりました。　決してスターウォーズファンの方々に喧嘩を売っているつもりはないのですが、どうしても大作と比べてしまいました。どうぞお気を悪くなさらないで、たまにはスタトレも観て下さい。　もちろんスタトレファンの方は、すぐに、絶対、観て下さい。

できれば、JJエイブラムズ監督、　TNGも、ピカード艦長が元気なうちに撮っていただけないでしょうか？

| STAR TREK | 01:14 | comments(0) | - |