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2007.02.22 Thursday

邪眼は月輪に飛ぶ　藤田和日郎　了

週刊ビックコミックスピリッツにて短期連載されていた、藤田和日郎作「邪眼は月輪に飛ぶ」が好評の間に終了しました。　この作品については２度とりあげましたが、未だ多くのアクセスを戴いています。　その１・その２

連載終了からしばらく経ってしまいましたが、まとめておこうと思います。

宮沢賢治の『なめとこ山の熊』とイメージが被りました。　人としてのありよう、生き様を描くのは藤田氏も宮沢氏も同じようなスタンスで書いておられるような気がします。と書きました。　なめとこ山の熊に出てくる老マタギは命を落としてしまいましたので、鵜平は？と気にしていましたが、

こちらの老マタギは生き延びました。　なめとこ山に住む熊の親子が語らうシーンはこちらには無く、代わりにハリウッド的な映像が用意されています。　上空数百メートルから捕らえた狙撃シーン。　地下鉄内を失踪するフェラーリ。　ミネルバの邪眼に対峙するは、垂直離着陸機ハリアーのサイドポッド。　人間様の武器をミネルバは恐れました。

藤田先生も、宮沢先生と同じように自然を愛し、人を愛しておられるようにお見受けします。　「からくりサーカス」「うしおととら」他のお話の中にも出てくる悪は、想像を絶する悪として存在します。　人に仇なす為だけに存在する悪が出てきます。　が、生まれたときからそうではなかったと描かれます。　生まれに宿命を背負った者が描かれますが、それもその者が選んだものとして説明されます。　努力しなければ成果が伴わない。　好きな人にその思いを伝えると、それに伴い得るものと失うものが、ともに描かれます。

自然を愛し、自然を守ろうと考えるのは、あくまで人間自身であり、自然を破壊するのが他ならぬ人間自身であったとしても、人間が居なくなればよいなどという結論には至りません。決して。

楽しむ人生。　責任を取る人生。選ぶ事の大事さと尊さ。　俗物であることを卑下しない生き方。　この時代に、少年が読む漫画として相応しい感性だと思います。　ハッピーエンドがつまらない、とは言えないことを教えてもらいました。　さて、次回作が楽しみです。　　

| 漫画 | 01:02 | comments(0) | - |

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