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2006.06.29 Thursday

団地ともお　の　お葬式

author : rhymin' master

週間スピリッツ連載の「団地ともお」。　今週は掲載されていましたが、先週はお休みでした。　都合３週前のお話は、、。　ケリ子こと鎌倉桂子の祖父が他界し、お葬式に出るため北海道へ飛行機で出掛けるお話でした。　鎌倉家の祖父の人となりや、お葬式自体のお話は出てきません。　それよりケリ子が帰京してからのお話です。　血が繋がった祖父とはいえ、ほとんど面識はありません。人が亡くなって、悲しんでいる雰囲気はケリ子にも理解できるのですが、心から悲しいとかの感情は出てきません。　それより飛行機内でもらえるおみやげや、北海道で食べたご馳走の方が印象に残ります。　最初はそんなケリ子を責めるともおです。　自分のじいさんが死んだら、後を追う等と言い出す始末。　しかし、自分の正直な気持ちと、悲しまなければいけないのではないか？という気持ちのぶつかり合いにガラにも無く悩むケリ子。　そんなケリ子の様子を見たともおは、、、。

ともおは、砂場でケリ子とトンネル掘りごっこを提案。　向かい合い砂を掘る二人。　どんどん掘り進み、二つの坑道が繋がる瞬間、ぎゅっと手を握るともお。　がんばれ、というともおなりのメッセージがそこに。　しかし、ケリ子はそんな、ともおの気持ちを知ってか知らずか、はたまた恥ずかしいからか、パ～ンチ。　ここでお話は終わりました。

自分の記憶によると、ともお内で人が亡くなったのは、担任の先生の先生以来です。　故先生は担任先生に、教育とはなんぞや？と尋ねられていたのですが、上手く答えを出せたのでしょうか？　亡くなって、煙になった先生を眺めた担任はどう思ったのでしょうか？

いつもながら、「団地ともお」では、作者が答えを提示することはありません。　どう感じるのかは読者まかせです。　と、いうよりも、作者自身が答えを持っていないのではないかと思います。

人の生き死に、人生における価値観、仕事に対する満足。　老後にある第２の人生。　離れて暮らす家族。頭の回転の速い人、遅い人。　逆上がりが最初から出来る人、出来ない人。

その様な事象に答えを探すことは簡単でしょうか？困難でしょうか？　それも人それぞれでしょう。思うに、作者は未だ一緒に暮らす家族を送ったことが無いのでは？　しかし、近い人を送った時、その時々の感情を作品に投影しているのではないか？　と、感じました。

砂場トンネルで。手が繋がった時の感覚、坂道を自転車で下る時、右手で金網を触りながら下る感覚。じいちゃんが死んでも涙が出ない感覚。　これらはとてもリアルに感じられます。

漫画家たかもちげんが、晩年に描いた「祝福王」。　たかもち氏が難病に苦しんでいた時に宗教について描いた作品です。　良い作品と呼ぶ人もいますが、私はそう思えません。　作者が自分自身の救済の為に描いたように感じられるからです。　尊敬するオーディオ評論家の長岡鉄男氏。彼の鋭い観察眼も文章力も、その晩年には明らかな衰えが見られました。　いづれ、自分にも愛する人を送る日が来るでしょうし、自分自身の晩年を意識する時も来るでしょう。その時、何を感じて、何を面白いと感じるのでしょうか？　ともおの作者、小田扉さんが、血の涙を流す主人公を描く日が来ることはあるのでしょうか？

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